映画「バーデスデーカード」を見てちょっと昔を懐かしむ

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作品紹介にある『10歳のときに亡くなった母親から毎年届くバースデーカード』のくだりで、涙腺を全力で煽る展開と予想はしていたのだが──。

蓋を開けてみれば、何故か「あっ、懐かしい」と過去を振り返りたくなる、ノスタルジックな作品に感じた。

母は見ることが叶わぬ娘の未来を想像し、娘は母の過去を遡りながら、次元から切り離されてなお絆を深めていく。

無償の愛”という言葉がしっくりくる、いい作品だった。

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バースデーカードにするか、ウシジマくんにするか悩んでいた

私の涙腺が特に弱くなる題材は、「動物」と「家族愛」だったりする。

言葉はわからないけれど、本能で生き抜く裏表がない純粋な生涯として、動物のドキュメンタリー物には弱い。映画では忠犬ハチ公とか子猫物語とか(古い)。

映画「バースデーカード」は、上映前の予告でアンテナに引っかかった作品だった。

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でもどちらかといえばウシジマくんを見たくなっていた(直球)。

バースデーカードは東映配給で上映館も少なく、近場では平日レイトショー1本のみという「大人ホイホイ」なタイムスケジュール。年末までは上映ラッシュが続くので、下手に翌週に回すとまた豊橋まで行くハメになりそう……。

ウシジマくんは来週にしても余裕だろうし、じゃあ行っときますかと、釣具を用意して映画館へ向かう。

題材からして女性が多いと思ってたけれど、私を含む半数以上がソロのおっさんリーマンという謎の客層。宮崎あおい目的が微レ存?

まあ確かに、図書館で娘と会話している時、ハーフアップの髪が肩にかかっているあの絶妙な感じが最高にグッときた(パネルでください)。

……それは置いといて、浜松で上映館もここだけなのに、10人いるか?程度の客数。

唯一の誤算は、23時過ぎになる上映時間だったため、帰りに駐車場の無料券がもらえなかったことだった。

このミスをやったのは何回目だろう……。

40歳前後にはビビッと来るシーンが多い

作品内で取り扱われている時事などから、脚本を作った監督・吉田康弘は同年代だろうなぁと思っていたら、やっぱりそうだった(1年差)。

とはいえ、ピンクレディーはさすがに名前と「◯年代を振り返る!」的な番組で知っている範囲だけ。

GOING STEADYのアルバム『さくらの唄』にある『銀河鉄道の夜』が流れた時は懐かしかった。

この作品で銀杏BOYSの存在を知ったのだけど、音源はどうせならゴイステのほうが良かったし、あれは今聞いても心にしみる。

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ある意味核となるアタック25を”そのまま”使うことで、久しぶりに児玉清の「正解!」を聞いたりと、劇中では「ちょっと昔」の日本が映し出されている。

時代系列を脳内で整理しているうちに、気がついたら現代に思考が戻っていく奇妙な感覚。折りたたみのケータイを使っているのを見て、「あ、現在(イマ)じゃない」とか思っていた。

過去に戻っていくパターンは多いけれど、時がどんどん進み登場人物は成長していく。作品内で成長を見届けるのは、なんだか新鮮だ。

どこかで見たことのある景色と思っていたらロケ地が諏訪だった

こんな狭い内湾で近くが山に囲まれてる場所って、海沿いにはないよなぁ。坂道っぷりが伊豆ぽいんだけど…」──諏訪湖でした

諏訪で撮影の映画「バースデーカード」 ロケ地マップを作成

高原のシーンは”霧ヶ峰”とわかったんだけど、余命宣告されている母を海沿いから高原に連れていくのは、さすがに無理がありすぎる──と思っていたら、車のナンバーが「諏訪」だったので納得。

天文観測するなら、やっぱり長野だよね!

花火のシーンも、全国的に有名な諏訪湖の花火大会なら、あの派手さも納得した。伊豆のは──うん、多くはいわない。

小豆島は行ったことがないから流石にわからなかったけれど、フェリーからのアングルで主人公と母の級友と友人になった娘との別れのシーン──

堤防に釣り人がいたのが最高にリアルだった。やっぱ堤防には釣り人がいないとな!

全体的に展開はフラット、だが構成力で魅せる

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亡くなった母が娘(正確には子供たち)の未来へ手紙を贈る」という、物語の核を最初に持ってくるため、驚きの展開!──というのはない。収束すべきラストに向けて、淡々と進行していく。

退屈に感じる一歩手前で、ちょっとした変化がもたらされるので、中ダレ感はなかった。ウルッと来たらクスッとさせる、エンターテイメントなバランスが保たれていて、123分を存分に楽しめていた。

題材的に暗い話になりがちだけど、そこはサブキャラクター達が補ってくれている。特に息子が柔軟剤という感じ。

とことん闇に落ちて行かない空気感が素晴らしかった。

主人公がアタック25に出演しようとする所からは、「よし、ラストへ向かうぞ!」と背中を叩かれた感覚。

昔を懐かしんでいたところで、現在へと引き戻されつつ、感涙の結婚式へと進んでいく。

母の手紙に未来(自分)を固定されていると思い込み、一時は拒絶することになるのだが……。最後の最後で、親子の想いが合致する。

病室で編んでいたレースから、ここに至るまでは想像できていたが、映像にされるとただただ、美しかった。

名演技が光りますねぇ

主演である橋本愛のエキゾチックな美貌と、母親役である宮崎あおいの心を射抜かれる笑顔。対象的な親子だが、秘めた心情を汲むと、これがベストだったと思う。

今を生きる娘と、その記憶にある母──。「子供たちの前では笑っていたい」といっていたように、笑顔がこちらの記憶にも残るほど。

”俳優”の演技がいいのは当たり前だが、子役の演技もなかなかしびれた。

印象的だったのは、小学校のおぜう様系いじめっ子。表情で感情を表す変化が記憶に残る。劇団で経験を重ねていそうだし、舞台が映えそうだなーと。

主人公の小学生と中学時代を演じた子はそれぞれ違うけれど、主演にバトンを渡すまで、身体と心の移り変わりがピッタリだった。

最長で15年の時を描いた作品で、その中で唯一全ての時代を演じたのが、父親役であるユースケ・サンタマリア。

鈴木家を見守ってきた柱として、最初から最後まで「THE父親」という印象だった。娘の恋人(とは思ってなかった)から結婚を告げられたタイミングには笑う。「ここでいわれりゃ、そりゃそういうリアクションするよな~」と。

家族というか、絆と温かさを感じる作品

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子を持つ親にとっては、ダイレクトにくる作品でないかな。

上映館は少ないが評価は比較的高め。わりと高い年齢層(30代上)に支持されると思う。それ以下の若者という括りでは、女子には響くけれど、男子には退屈かもしれない。

TVの特別編成枠で放映すれば話題になったかも。家族愛を描いているので、リビングで家族揃ってみると、面白い視点で映ると思う。

人は亡くなっても忘れない限り存在は残り続ける。

そのトリガーがなんであれ、離れても、家族であった事実と記録は、記憶があれば想い続けることができる。

戸籍上ではなく、精神上での家族という強さを見せつけられた作品だった。

映画『バースデーカード』公式サイト

映像作品も十分いいのだが、児童文庫として学校図書で広まって欲しいなという思いはある。

家族同士の接点が希薄になっている現代だからこそ、家族の誰かがこれに触れ、”在り方”を少しでも鑑みてもらえれば、世に変化が生まれるかもしれない。

不安定な時事を抱え持つ現代だからこそ、現実に起こりうる優しさと美しさを感じたので、道徳の教材としても使って欲しいと思うほど。

「家族を失う悲しみ」を前面に押し出し、精神論を投げかけてくるドキュメンタリーは多い。震災後は特にその傾向が強かったが、そういう”露骨”なテーマを扱うのも薄れてきている。

鈴木家は誰も引きずってはおらず、常にそこに居るかのように生活している。

これは個人の気概もあるだろうが、「天国から見守っているよ」みたいなお決まりのセリフも、大切な人が見ていてくれるからこそ、成長できる要因なのではないか? ──と感じている。

エンドロール後の映像が、「離れていても、想う限り家族で在り続ける」を表したいいカットだった。

きっとこの作品の愛は、誰かに届く。

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